1 はじめに

交通事故の被害により腰部痛の症状が発生することがあります。
腰椎捻挫、腰部挫傷、あるいは腰椎椎間板ヘルニアなどの傷病名が付けられることが多いです。
腰部から臀部にかけての痛みや、下肢の痺れなどの症状が出ることもあります。

今回の弁護士コラムでは、交通事故による腰部痛について、ご説明させていただきます。

2 腰部痛の治療のポイント

交通事故による腰部痛の症状は、一定期間の治療を続けることにより治癒することもあります。
一方で、一通りの治療を終えても症状が残存する場合には、後遺障害12級13号や14級9号に認定される可能性があります。

腰部痛の治療については、以下のポイントに注意しなければ、適正な後遺障害等級の認定を受けることが難しくなることがあります。
また、後遺障害等級の認定にならない場合でも、賠償金額に影響する可能性がありますので、注意が必要です。

①事故後すぐにMRI検査を受けること
MRI検査では、神経の状況を把握することができます。
MRI検査により神経系統に障害が生じている所見が見られれば、後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まります。

②整形外科での治療を受けること
腰部痛の症状がある場合には、整形外科で通院治療を受けるようにしましょう。
医師が症状の有無および治療の必要性を判断し、治療が継続されたということが、後遺障害等級の認定において重要となるためです。
整形外科での治療を受けることがポイントであり、整骨院に偏った通院はお勧めできません。

③適切な頻度で治療を続けること
腰部痛に関する後遺障害等級の認定では、通院の頻度も考慮されます。
少なくとも週に2回程度、整形外科に通院することが望ましいと考えられています。
通院の頻度が極端に少なければ、症状が軽かったものとみなされ、後遺障害等級の認定はもちろん、賠償金額の算定においても不利になるおそれがあります。

④適切な期間治療を続けること
腰部痛に関する後遺障害等級の認定では、通院の期間も考慮されます。
後遺障害等級の認定を受けるためには、少なくとも6か月以上の期間、通院を継続することが必要と考えられています。
痛みなどの症状があるのであれば、きちんと治療を続けるようにしましょう。

3 後遺障害12級と14級の違い

腰椎捻挫、腰部挫傷、腰椎椎間板ヘルニアによる腰部痛は、後遺障害12級13号あるいは14級9号に認定される可能性があります。

①12級の基準
12級13号の認定基準は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」です。
医師による神経学的所見に加え、レントゲン画像、MRI画像等の画像所見が必須となります。
そして、自覚症状の原因となる神経系統の障害の存在が、画像という他覚的所見により医学的に証明できることが要件となります。
なお、画像所見さえ見つかれば必ず12級13号になるというわけではなく、その画像所見が裏付ける神経系統の障害が交通事故により生じたものであり、既往症によるものではないことを「証明」する必要がある点に注意が必要です。

②14級の基準
14級9号の認定基準は、「局部に神経症状を残すもの」です。
医師による神経学的所見と、自覚症状とが一致していることが必要です。
他覚的所見は必須とはされませんが、症状の連続性・一貫性が認められ、自覚症状が医学的に見て「詐病や誇張ではない」と推定されることが重要となります。
14級9号の認定に至らない場合には、後遺障害は非該当となります。

4 後遺障害14級の認定を受けるポイント

交通事故による腰部痛は、後遺障害12級13号あるいは後遺障害14級9号に認定される可能性があります。
後遺障害12級13号に認定されるためのハードルは非常に高く、近年では後遺障害14級9号の認定も困難になってきているように感じます。
以下では、後遺障害14級9号に認定されるためのポイントをご紹介いたします。

①治療の経過
事故後どのような症状が出ているかがポイントです。
腰部の痛みや、下肢や足(足指も)の痺れの症状が出ていることが重要となります。
また、事故直後あるいは間もない時期に症状が出ていることが必要であり、事故から数か月後に初めて症状が出てきた場合には、事故との因果関係が否定される可能性が高いです。

②症状の連続性・一貫性
定期的な通院による医師の診察・治療の継続が重要です。
整形外科に週2~3回以上の通院を6か月以上継続してもなお、症状が残存しているのであれば連続性・一貫性が認められやすいでしょう。
なお、整骨院だけに偏重した通院状況では、後遺障害14級9号の認定は難しくなりますので、注意が必要です。

5 腰部痛の後遺障害等級認定に必要な検査

①画像検査
後遺障害等級の認定においては、MRI検査を行うことが重要です。
MRI検査では、神経に生じている異常を確認することができます。
そのため、MRI検査により異常所見が確認できれば、後遺障害等級の認定を得られる可能性が高まります。
そして、腰部痛の事案では、事故後早い段階でMRI検査を受けることが大切です。
事故から時間が経ってからMRI検査を受け、異常所見が確認されたとしても、その異常所見が事故によるものなのか、加齢性のものなのかが問題となるためです。

②神経学的検査
腰部痛の神経学的検査としては、ラセーグテスト、SLRテスト、FNSテスト、深部腱反射テスト、徒手筋力検査、筋萎縮検査、知覚検査など、様々なものがあります。
後遺障害等級の認定においては、上記の中でも深部腱反射テストが重視されると考えられています。
深部腱反射テストとは、膝やアキレス腱をゴムのハンマーで叩いて反応を確認するものであり(腰部の神経に神経症状があれば、反応の低下や消失が見られます)、自覚症状によって結果が左右されず客観性が高いとされています。

6 弁護士にご相談ください

青森シティ法律事務所では、交通事故による腰部痛の事案について、数多くのご相談・ご依頼をお受けし、解決実績も豊富にございます。
交通事故の被害に遭われてお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽に青森シティ法律事務所にご相談いただければと存じます。

(弁護士・木村哲也)

当事務所の弁護士が書いたコラムです。

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