1 はじめに

夫婦が離婚をする理由として、「性格の不一致」が挙げられることが多いです。
ただし、一言で「性格の不一致」といっても、その内容は様々です。
金銭感覚がずれている、育児・教育に対する考え方が違う、家族・親戚との付き合いが悪い、会話がないなど、その中身は夫婦ごとに異なります。

本コラムでは、「性格の不一致」を理由とする離婚について、詳しくご説明いたします。

2 性格の不一致を理由に離婚ができるか?

まず、性格の不一致を理由に離婚ができるか?という問題があります。

この点、離婚をする方法には、①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚があります。
①協議離婚、②調停離婚の場合には、離婚に至る原因がどうあれ、夫婦双方が納得し、合意ができるのであれば、離婚は成立します。
そのため、離婚についての協議(2人での話合い)をし、その結果、合意ができるのであれば、性格の不一致を理由とする①協議離婚が可能となります。
仮に協議での離婚が成立せずに、離婚調停を申し立てた場合であっても、調停(裁判所を交えた話合い)の中で、最終的に相手が離婚に応じることになれば、性格の不一致を理由とする②調停離婚が可能となります。

調停でも離婚が成立しなかった場合には、離婚訴訟を提起することで③裁判離婚による解決を求めることになります。
ただし、離婚訴訟において離婚請求が認められるためには、法律で定められた5つの離婚事由のどれかが必要となります。
法定離婚事由の1つに、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」ことがありますが、性格の不一致それ自体では、基本的には「婚姻を継続し難い重大な事由がある」とは認められず、離婚請求は認容されません。

そもそも夫婦は、元々は血のつながりのない他人である人間同士が結びついたものである以上、夫婦の一方に相手方に対する思いやりのなさが見られたり、夫婦間に価値観の相違があったりすることは、どの夫婦にも起こりえる事柄であるといえます。
そこで、どの夫婦にも性格の不一致は多少なりともあると考えられ、性格の不一致のみでは婚姻を継続し難い重大な事由とは評価されません。

とはいっても、性格の不一致を原因として、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態に達している場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と評価され、離婚請求が認められることになります。
訴訟においては、このような主張を基礎づけるために、相当期間別居していることや、相手方が明らかに異常な浪費を繰り返していることなどを主張することになるでしょう。

このように、性格の不一致があったとしても、最終的に訴訟になった場合には、離婚請求が認められない場合もあります。
よって、離婚に向けた段取りや方針は、慎重に行うべきものといえ、離婚問題に精通した弁護士にご相談・ご依頼することをお勧めします。

3 性格の不一致を理由に慰謝料を請求できるか?

次に、性格の不一致を理由に慰謝料を請求できるか?という問題があります。

結論からいえば、性格の不一致を理由として慰謝料を請求することは難しいです。

通常、性格の不一致は夫婦双方の問題であるため、一方のみが慰謝料支払いの義務を負うとは考えられません。
そのため、性格の不一致を理由とした慰謝料請求は難しいものと考えられています。

一方で、相手方が自らに責任があることを認め、任意に支払いに応じてくれるのであれば、慰謝料・解決金を受け取ることはできます。
しかし、そのような例は少ないとお考えいただくのがよいと存じます。

4 性格の不一致を理由とする離婚を進めるポイント

(1)協議離婚におけるポイント

協議離婚では、性格の不一致を理由とするものであっても、当事者双方が離婚に合意するのであれば、離婚をすることができます。
そのため、まずは、相手方に対し、離婚に向けた話し合いをしたいと持ち掛けるところからスタートとなるでしょう。

その話し合いの場において、相手方が離婚に応じないと予想される場合であっても、自らが離婚をしたい意思を有していることを、相手方にしっかりと認識させるべきです。
離婚に対する確固たる意思があることを示し続け、円満な夫婦関係にもはや戻れないということを相手方に認識させ、離婚という結論しかないということを伝えることが重要です。

また、離婚条件のうち、譲歩できる点がないかを検討することも大事です。
例えば、本来支払う必要がないものであっても、相手方に対して解決金として幾分かのお金を支払うことで、相手方が離婚に応じることもあります。
ただし、離婚したいがためにあまりにも譲歩した条件をつけることで、後々苦しむことになる事態は避けなければいけません。
衝動的・感情的になることなく、冷静な判断が必要となります。

(2)調停離婚におけるポイント

協議が成立しなかった場合には、調停手続を利用して、離婚の実現を図ることになります。
調停においても、調停委員に対し、離婚の意思が明確であることを示すことが重要です。
また、金銭面で一定の譲歩の姿勢を見せることも有用であることは、協議離婚の場合と同様です。

(3)裁判離婚におけるポイント

裁判離婚においては、法定の離婚事由が認められる必要があります。
ただし、性格の不一致それ自体は、離婚事由とされていません。

そこで、性格の不一致を理由として裁判離婚を求める場合には、性格の不一致が原因で婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態に達していると主張する必要があります。
そのためには、一定期間別居を継続したり、性格の不一致のほかに相手方の不倫・暴力といった事情を加わえたりすることが必要になります。

また、裁判離婚の場においても、裁判官から和解を勧められることもあります。
そこでも、協議離婚・調停離婚の場合と同様に、離婚に対する意思が固いことを裁判官に伝え、夫婦関係が破綻してしまっていることを主張・立証することが重要です。

5 弁護士にご相談ください

性格の不一致を理由とする離婚は、最終的に訴訟まで進んだ場合には、性格の不一致の事実だけでは離婚が認められない場合があります。
そのため、相手方が離婚に応じない場合には、協議の段階から離婚の意思を明確に伝え、相手方が離婚に同意するように粘り強い交渉・説得が必要になります。さらには、調停・訴訟と進むことを見越して、早期に別居をしたり、必要な証拠を収集したりするなど、適切かつ戦略的に手続を進めていくことも重要です。

弁護士にご依頼いただくことで、精神的負担が大きい相手方との交渉や、法的知識が必要となる調停・訴訟での主張・立証を、弁護士に一任することが可能となります。
また、弁護士からは、別居・引越しスケジュール、子どもの学校関係の手続、住民票の移し方・タイミング等、離婚をするにあたってのさまざまなポイントについて、適切なアドバイスをすることが可能です。

当事務所の弁護士は、これまで性格の不一致を理由とする離婚のご相談・ご依頼を多数お受けしてきました。
性格の不一致による離婚でお悩みの方、性格の不一致を理由とする離婚をお考えの方は、ぜひ一度、青森シティ法律事務所の弁護士にご相談ください。

(弁護士・一戸皓樹)

当事務所の弁護士が書いたコラムです。

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