青森シティ法律事務所では、配偶者からのモラルハラスメント(モラハラ)に苦しむ方からの離婚相談を多数お受けしております。
今回のコラムでは、モラハラの被害による離婚について、ご説明させていただきます。
1 モラハラとは?
モラハラとは、「モラルハラスメント」の略称です。
「言葉や行動、態度による精神的いじめ」、「精神的暴力、精神的虐待」を指します。
【モラハラの具体例】
①人格を否定する言葉(例えば、「最低」、「馬鹿」、「生きる価値がない」など)を浴びせる。
②些細なミスを責めたり、長時間の説教をしたりする。
③会話の途中で急に不機嫌になったり、大きな声で怒鳴りつけたり、無視したりする。また、物を叩いたり壊したりして威嚇する。
④家計簿をつけさせるなどして些細な支出まで細かくチェックしたり、常識的には問題がないと考えられる支出について文句をつけたりする。また、「俺が食わせてやっている」、「誰の金だと思っているんだ」などとお金に関する暴言を浴びせる。
⑤風邪などの病気で寝込んでいるのに家事をするように要求する。
⑥友人同士の懇親会・同窓会などのイベントに参加することを阻止したり、些細な行動について許可をとるように強要したり、行動を制限しようとしたりする。
2 モラハラで離婚できるか?
相手方が離婚に同意するのであれば、モラルハラスメント(モラハラ)の事実の有無にかかわらず、離婚することができます。
一方で、相手方が離婚に同意しなければ、民法が定める法律上の離婚原因に該当しない限り、離婚を成立させることができません。
より正確に言えば、離婚の手続は離婚協議・離婚調停・離婚訴訟の3段階となっていますが、離婚協議または離婚調停の段階で夫婦同士が離婚に合意できれば、離婚を成立させることができます。
しかし、離婚調停でも合意ができずに離婚訴訟に進んだ場合、離婚を認める判決を得るためには、以下のような法律上の離婚原因に該当することが必要となるのです。
【法律上の離婚原因】
①不貞行為
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由
モラハラの被害については、上記の⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由にあたるかどうかが問題となります。
この点、よほど重大なモラハラの事実が証拠により裏付けられるのであれば、上記の⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由にあたると判断されるでしょう。
しかし、そのような裏付け証拠を確保できないことも少なくありません。
モラハラの被害を理由とする離婚においては、モラハラの事実を裏付ける証拠の確保が困難な場合に、まずは別居という形をとったうえで離婚の手続を進めていくことが有効となるケースが多いです。
夫婦別居状態が長期間(具体的な事案により異なりますが、おおむね4~5年以上)継続すれば、それをもって上記の⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由にあたると認められる可能性が高いです。
また、別居をすることにより、離婚に向けた話し合いや調停がスムーズに進められる状況となることも多いでしょう。
別居を続ければいつかは必ず離婚できる状況となりますし、別居中に婚姻費用分担請求をすることにより相手方が「離婚もやむなし」との考えに傾いていくことも少なくありません。
3 モラハラで慰謝料請求できるか?
モラルハラスメント(モラハラ)の被害により離婚に追い込まれ、精神的苦痛を被ったのであれば、慰謝料を請求することができます。
ただし、相手方がモラハラの事実を認めず、慰謝料の請求を争ってくることも多いため、モラハラにあたる言動を裏付ける証拠の存在が重要となります。
モラハラの証拠については後述いたしますが、証拠の確保が難しいことも少なくありません。
それでも、ひどいモラハラの事実を証拠により裏付けることができれば、慰謝料を請求できる可能性が高くなります。
慰謝料の金額は、モラハラにあたる言動の内容・程度、モラハラが夫婦関係に与えた影響の程度、被害者が被った被害の内容・程度など、様々な事情を考慮して算出されます。
実際には、モラハラの被害による離婚の場合、慰謝料の金額はそれほど高くならないことが多いように見受けられ、裁判例では数十万円~100万円前後の慰謝料が認められることが多いようです。
4 モラハラの証拠
モラハラ(モラルハラスメント)の被害を理由として離婚を求めたり、慰謝料を請求したりするためには、モラハラの事実を裏付ける証拠があることが重要となります。
モラハラの加害者は、「そんなことを言った覚えはない」、「そんなつもりで言ったのではない」などと主張し、モラハラの事実を否定してくることが多いからです。
モラハラの主な証拠としては、以下のようなものが考えられます。
【モラハラの証拠の例】
①モラハラの言動を録音したデータ。
②モラハラにあたるLINE・メールなどの記録。
③モラハラの事実を基礎付ける物的証拠(相手方につけることを強要された家計簿、相手方に提出を強要された反省文・始末書、相手方が壊した物を写真撮影したデータなど)。
④相談窓口(女性センター・配偶者暴力相談支援センター)や警察などへの相談記録。
⑤うつ病などの精神疾患にかかっていることの診断書。
⑥モラハラの被害状況を記載した日記帳・メモなど。
⑦当事者や目撃者の証言。
モラハラの証拠は、種類・内容により価値が異なります。
上記の①~③の証拠は、客観性が高く、有力な証拠となり得るでしょう。
上記の④の証拠は、モラハラの事実を推認させる材料となり得ますが、相手方の言動を直接裏付けることはできませんので、証拠価値は高くないと考えられます。
上記⑤の証拠は、モラハラの事実を推認させる材料となり得ますが、精神疾患の原因がモラハラであること、モラハラが存在したことまで裏付けるのは難しいと言えるため、証拠価値は高くないと考えられます。
上記⑥の証拠は、モラハラの事実を推認させる材料となり得ますが、言ってしまえば「後から何とでも書ける」ものであるため、信用性が厳しく検討されることが多く、証拠価値は高くないと考えられます。
上記⑦の証拠は、被害者本人や身内(親族・友人など)の証言の信用性については厳しく判断される傾向にあるため、証拠価値は高くないと考えられます(だからといって、全くの第三者の証言を得ることは難しいことが多いでしょう)。
5 弁護士にご相談ください
モラルハラスメント(モラハラ)の加害者との離婚協議をご自身で行うとなると、かなりの精神的負担となることが想定されますし、不利な条件を押し付けられてしまうおそれがあります。
まずは、法律と交渉の専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
離婚問題を得意とする弁護士にご依頼いただくことにより、適正な条件による離婚に向けて交渉を進めていくことが可能となります。
また、モラハラの証拠の確保や別居の段取り等について、必要なアドバイスを求めることもできます。
青森シティ法律事務所では、離婚問題に関するご相談・ご依頼を多数お受けし、モラハラ被害の事案の対応経験・解決実績も豊富にございます。
モラハラの被害でお悩みの方がいらっしゃいましたら、お気軽に青森シティ法律事務所にご相談いただければと存じます。
(弁護士・木村哲也)