青森シティ法律事務所では、借金・債務整理に関するご相談・ご依頼を多数お受けしております。
借金の返済が困難となった方の中には、ローン返済中の住宅をお持ちの方もいらっしゃいます。
住宅を手放すことに抵抗があるという方も多くいらっしゃいますが、住宅資金特別条項付個人再生という手続をとることで、ローン返済中の住宅を維持したまま、他の借金の返済を大幅に軽減することが可能となります。
今回のコラムでは、住宅資金特別条項付個人再生について、ご説明させていただきます。
1 住宅資金特別条項付個人再生
住宅資金特別条項付個人再生は、民事再生(個人再生)の手続の特例版です。
個人再生とは、借金・債務整理の方法のうち、借金の額を大幅に減額し、原則として3年で分割返済していく手続です。
借金の返済が困難になった人が選択できる手続には、個人再生以外にも自己破産があるのですが、自己破産では住宅ローンを含む借金がすべて免除される代わりに、住宅を手放さなければならないのが原則です。
これに対し、住宅資金特別条項付個人再生を利用すれば、住宅ローン以外の借金の額を大幅に減額し、月々の返済額を大幅に軽減する一方で、住宅ローンに限って残高の減額をせずに返済を継続し、住宅を手元に残すことが可能となります。
2 住宅に関する要件
住宅資金特別条項付個人再生を利用するためには、住宅について以下の要件を満たす必要があります。
(1)個人再生をする者が所有する建物であること
戸建ての場合には、建物を所有していることが必要であり、敷地のみの所有では要件を満たしません。
マンションの区分所有権も住宅資金特別条項付個人再生の対象となります。
個人再生をする者の単独所有だけでなく、配偶者などとの共有でも構いません。
(2)個人再生をする者自身がその建物に居住していること
専ら事業用の建物である場合、第三者に賃貸して個人再生をする者自身は別の所に住んでいる場合、空き家になっている場合には、要件を満たしません。
一方で、個人再生をする者自身は単身赴任中でも家族が住んでいる場合、現在は居住者がいないものの将来的には個人再生をする者自身が住むことが明らかな場合には、要件を満たします。
(3)自宅兼店舗・自宅兼事務所・二世帯住宅の場合
自宅兼店舗・自宅兼事務所の場合には、床面積の2分の1以上に相当する部分について、個人再生をする者自身が住居として使用していることが必要です。
二世帯住宅の場合には、玄関・台所などが別々で物理的にそれぞれの住居が独立しているのであれば、個人再生をする者の居住部分が床面積の2分の1以上である必要があります。
(4)複数の建物がある場合
個人再生をする者が居住用不動産を複数所有している場合には、主として居住している建物であることが要件となります。
3 住宅ローンに関する要件
住宅資金特別条項付個人再生を利用するためには、住宅ローンについて以下の要件を満たす必要があります。
(1)住宅資金貸付債権であること
住宅の建築・購入のための借入であることが必要です。
戸建て、マンションのいずれでも問題はなく、戸建てであれば建物だけでなく敷地の購入も含みます。
また、その借入について、住宅に抵当権が設定されていることが必要です。
なお、事業資金の借入をし、住宅に抵当権を設定した場合などは、対象外です。
(2)住宅ローン以外の担保権が設定されていないこと
住宅ローン以外の担保権(抵当権など)が住宅に設定されている場合には、住宅資金特別条項付個人再生を利用することはできません。
(3)保証会社が代位弁済をした場合
住宅ローンの返済を一定期間滞納すると、保証会社が住宅ローンの債権者へ支払(代位弁済)をします。
そうすると、住宅ローンの債権が保証会社に移転します。
このように、保証会社が代位弁済をした場合には、代位弁済の実行から6か月以内に、裁判所に住宅資金特別条項付個人再生の申立てをする必要があります。
4 住宅ローンの返済の軽減
住宅ローン特別条項付個人再生では、住宅ローン以外の借金は減額されるものの、住宅ローンは減額されないのが原則です。
しかし、住宅ローンを滞納している場合や、減額した他の借金と並行して住宅ローンの返済を行うことが困難な場合には、以下のような「リスケジュール」の制度を利用し、住宅ローンの返済の負担を軽減できることがあります。
(1)期限の利益回復型
住宅ローンの滞納が一定額に達すると、「期限の利益」を喪失し、残金を一括で返済しなければならなくなるのが通常です。
期限の利益回復型のリスケジュールは、分割払いが可能な状態に復活させる方法です。
(2)最終弁済期間延長型
最終弁済期間延長型のリスケジュールは、住宅ローンの返済期間を延長し、月々の支払額を減額する方法です。
ただし、70歳になるまでに完済する計画である必要があり、かつ、延長できる期間は最大で10年間となります。
(3)元本一部据置型
元本一部据置型のリスケジュールは、減額した他の借金の返済期間中(原則3年)、住宅ローンの元本の返済を一部猶予してもらう方法です。
そして、減額した他の借金を完済し、支払の余裕ができた時点で、住宅ローンの月々の返済額を増やすこととなります。
(4)同意型
期限の利益回復型、最終弁済期間延長型、元本一部据置型のリスケジュールは、住宅ローンの債権者の同意がなくても、利用することができます。
一方で、同意型のリスケジュールというのは、住宅ローンの債権者の同意のもとに、より有利な条件を認めてもらうというものです。
例えば、ボーナス払いをなしにしてもらう、10年を超える返済期間の延長を認めてもらう、金利の見直し、返済額の一部免除などが考えられます。
しかし、交渉によってより有利な条件を認めてもらうことは、実際にはかなり難しいのが実情です。
5 弁護士にご相談ください
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借金・債務整理をお考えの方の中には、ローン返済中の住宅を手元に残したいと希望される方も数多くいらっしゃいます。
青森シティ法律事務所の弁護士は、住宅資金特別条項付個人再生についても、解決実績が豊富にございますので、安心してお気軽にご相談いただければと存じます。
(弁護士・木村哲也)