1 過失相殺・過失割合とは
労働災害(労災)の被害に遭った場合、被害者にまったく過失(落ち度)がないというケースもあれば、被害者にも一定の過失があるというケースもあります。
過失相殺とは、被害者にも労働災害の発生について過失がある場合、会社側に対して損害賠償を請求する際に、被害者の過失の比率分だけ、賠償額が減額されることを言います。
そして、会社側の過失の比率と被害者の過失の比率とを過失割合と言います。
例えば、被害者が受けた損害が3000万円であるとして、過失割合が会社側70:被害者30であれば、被害者が会社側に対して請求できる損害賠償の額は、30%分を減額した2100万円となります。
2 被害者に過失がある場合の労災申請
労災保険は、被害者の生活保障を目的とする制度です。
そのため、会社側の過失は、労災保険の申請の要件ではありません。
また、被害者に過失がある場合でも、労災保険の給付を受けることができます。
そして、被害者に過失がある場合でも、労災保険給付の額は、原則として、減額されることはありません。
法令上は、被害者側に重大な過失がある場合には、30%の支給制限があるものとされていますが、実際に支給制限が適用されることは少ないです。
3 被害者に過失がある場合の損害賠償請求
労働災害の発生について会社側に過失がある場合、被害者は会社側に対して損害賠償を請求することができます。
被害者に過失がある場合でも、会社側に対して損害賠償を請求することは可能です。
ただし、過失相殺により、被害者の過失割合の分だけ、賠償額が減額されます。
被害者の過失の有無および程度は、ケースによって異なりますし、複雑で専門的な判断が必要な領域です。
損害賠償請求の示談交渉や訴訟(裁判)では、会社側から過失割合を主張されることが少なくありませんので、弁護士のサポートのもとに対応されることをお勧めいたします。
4 裁判例に見られる過失相殺・過失割合
過失相殺が認められるかどうか、過失割合がどの程度になるかは、労災事故の発生状況等によって異なります。
過失割合に関する実際の裁判例を見てみると、被害者に過失がある場合でも、被害者の過失が20%~30%程度とされていることが多いように見受けられます。
そして、被害者の過失が50%を超えて認定されている事例は、被害者の著しく不安全な行動が主要な原因となって労災事故が発生したような場合に限られるものと思われます。
損害賠償請求の示談交渉や訴訟(裁判)では、会社側から過大な過失相殺・過失割合の主張が出されるケースが散見されますが、会社側の主張を鵜呑みにしてはいけません。
当事者が考える以上に、被害者の過失割合が小さく、会社側に重大な過失があるというケースも数多く存在します。
そのため、過失相殺・過失割合については、ご自身のご判断だけで対応するのではなく、まずは労働災害に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
5 弁護士にご相談ください
青森シティ法律事務所の弁護士は、これまでに、労働災害の事案に対応してきた実績があります。
労働災害についてご相談・ご依頼いただければ、適正な解決に向けたアドバイスとサポートを提供させていただきます。
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